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"Modesty, Fairness, and Grace" by TAKARAZUKA REVUE

月組公演『フリューゲル -君がくれた翼-』『万華鏡百景色』

『フリューゲル -君がくれた翼-』

ぶっきらぼうの堅物れいこちゃん(月城かなとさん)が、底抜けに明るくて前向きで自由奔放なうみちゃん(海乃美月さん)に振り回されながらも惹かれていき、心を開いていく…なんて!良い!のでしょう!初めて「ナディア」と呼ぶときのヨナスのちょっと照れくさそうな様子がたまらんでした。


冷戦下、東西を分断するベルリンの壁崩壊へ向かう動乱のドイツ…という重たい時代背景ではあるけれど、隔たれていても同じ思いや願いを持つ人たちのあたたかさとか、親子の絆とか、希望に向かって心を一つにしたときの熱量とか、そういう良い温度を感じて、ポスターのイメージ通りコメディ要素もあるけれど(しかも面白かった←どう言う意味だ)、それだけではない、期待していた以上に良い作品。笑える場面も、それぞれの生徒さんの持ち味が活きてたし、ラストのベルリンの壁が崩壊する場面なんて、盆を使ったあの演出と月組生による「歓喜の歌」は見ているこちらまで胸が熱くなりました。


たくさんの下級生たちが銀橋を渡ったり、客席降り演出があったりして、全然退屈しない。あてがきゆえ、色んな登場人物がそれぞれにイキイキしていたのも印象的。今公演で退団される方々も良いお役で光ってました。特にれんこんちゃん(蓮つかささん)はイケ渋オジ姿がとっても素敵でした。


サイト―先生、やっぱり信じていたよ。大好きなラブドリ以降ではアレとかアレとかで…「どうしたの?」って思わなくもない作品もあったけど、今作はめっちゃ良いです。そう言えばラスト、幕が降りたあとに「ああ、そうだった、これサイト―先生の作品だったわ」と思い出す演出もありましたね。(隣の席のおじさんが「なんだ?」って呟いてたけど)


『万華鏡百景色』

栗田先生大劇場デビューおめでとうございます!
ネオジャパネスクとでも言うのでしょうか、大正や昭和初期の原色の妖しさのあるレトロな雰囲気がお好きなのでしょうか、前半は先生のバウデビュー作品『夢千鳥』も思い出す世界観だなって思いました。


序盤は、生徒さんもおっしゃっていた「お芝居を二つ観る感じ」が強くて、月組さんで以前あった某ストーリー仕立てのショーと違って雰囲気が暗いと言うか深いと言うか…で、ちょっと難しいのかな?何も考えずに楽しめるショーではないのだな?って緊張していたのだけど、徐々に盛り上がっていって、どんどんワクワクしていく感じのショーでした。
予習なしで見たけど、ああなるほど、ある男(花火師)とある女(花魁)が輪廻転生を繰り返し現代にようやく結ばれる…みたいなストーリーなんだな?ってすぐ理解できたのは宙組『白鷺の城』のおかげでしょうか(違う)。


強く残っている場面としては…


花魁のうみちゃん。まぁ~美しいったらありゃしない。気品があふれていて、とてもよく似合ってる。「花魁をトップ娘役が」には意見が分かれるところかもしれませんが、花魁と言う職業についての本質は深く考えず、妖艶で、華やかで、美しく切ない世界観として私は「素敵」って思ってました。


ちな様の芥川龍之介の場面は、布を印象的に用いた強烈な場面。そう言えば前述の『夢千鳥』でも布をとても印象的に使った場面があったのですが、その時は血とか魂みたいなものを表現してたんだっけ?今回は炎。すごく激しさを感じました。
ちな様のまわりで赤い衣装に黒髪のおかっぱ頭の女たちが前衛的に踊るのですが、それに男役さんを起用されているのが良かったなぁ。男役さんに女装させる意味があると言うか、娘役さんでは体格的にもう少し弱く感じられたのではないかと思う。長身で(娘役さんに比べると)がっしりとした人たちがやるからこその強さと迫力がありました。


渋谷の場面。満員電車から始まるモノクロームの世界。渋谷って色の洪水って感じだけど、実態はそういう世界なのでしょうか。れいこちゃんはそんな渋谷の街に棲む「カラス」!それはそれは美しく、気高いカラスです。うみちゃんだけが、清楚な前髪ありの金髪セミロングに淡いブルーのワンピース姿なのが違和感なのだけど、哀しい街に舞い降りた天使みたいで綺麗だった。


月組さんのショー作品にいつも思うのだけど、男役群舞が何故だか特別色っぽくかつかっこよくないですか?フォーメーション、振付、楽曲…どれもとてもかっこよくて声出したくなっちゃう。なぜなんだろう?月組さんって長身の生徒さんが多いからだろうか?全体的に落ち着いた大人っぽさがあるからだろうか?(宙組の時は常に贔屓ちゃんをガン見していて全体を観ていなかったから、なのはそうなんだけど)


デュエットダンスは「幸!」。前作のデュエットダンスが賛否両論あったものだったためか(私はあれも好きでしたけど)、笑顔のお二人が幸せそうに踊る様子にちょっと泣きそうになっちゃった。タカラジェンヌたちの幸せが私たちの幸せなので(?)。


それから作品の良さもだけど、目がとにかく忙しい。注目したい人がいすぎる。二回観劇したのだけど、全然足りない。許されるならもっと観たかったなぁ~って思う公演でした!

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